■設立趣旨 トランスナショナルHRM研究所は、トランスナショナル企業における人的資源マネジメントに関する研究・提言を行うことを目的とした研究所として、2008年10月に設立された早稲田大学内プロジェクト研究所である。 ■研究概要 日本企業のグローバルな活動展開は、本社事業部の一方的主導による現地法人の統制型の形態から、グループ全体で競争優位の確立をめざす多方向型、ネットワーク型へとシフトしつつある。そして、多様で多拠点的なイノベーションの創出と共有が、海外事業展開の際の戦略的なキーワードとなっている。 この流れを受け、世界各地に分散した拠点が有する機能と強みを効率的に連携させる「トランスナショナル・マネジメント(TN-M)」【注1】がグローバル企業の潜在力を活かすコンセプトとして注目されてきた。 このTN-Mを志向する企業では、“Think Globally, Act Locally”等のスローガンを揚げ、地球規模の経営環境の変化に適時に対応できる組織構築の重要性を認識している。 文化・言語・習慣などが異なる拠点間機能を戦略的に連携し、優位性を発揮するためには「人財」マネジメントを成功に導くことが革新的課題となるからに他ならない。【注2】 一方、人的資源管理(HRM)のコンセプトも、パラダイム転換の時期を迎えている。 近年では、
①経営戦略とHRMとの連携を明示的に組込むことが当然のこととなり、とりわけ多国籍企業においてはグローバルな経営戦略の中にHRM戦略を最重要課題として認識しており、
そこで、本研究所では、企業の海外事業展開における人的資源管理上の変化を踏まえ、より有効な人的資源管理のあり方を研究し、その成果を広く社会に問いたい。②「人財」こそが、最も重要な経営資源であるという認識の高まりの中、海外事業においても、財務的評価のみならず、「人財」力の質的向上を図ろうとする企業が増加し、 ③経営の現地化が志向される中で、ローカル「人財」の幹部の育成と登用が進み、海外出向者の多国籍化が進んでいる等、「人財」に関するテーマは大きく様変わりしつつある。 また、トランスナショナルHRM研究(TN-HRM)を理論的、実証的に遂行する中で、トランスナショナルな研究形態を採用し、グローバル企業の組織進化を促し、地球規模で貢献できる研究者や実務家の「人財」を輩出することをも目指している。 【注1】 「トランスナショナル・マネジメント(TN-M)」:C・A・バートレット、スマントラ・ゴシャール(ハーバードビジネススクール教授)により、 著書 Managing Across Borders : The Transnational Solution, Harvard Business School Press,1989.の中で提唱されたもの。 【注2】 本研究所では、敢えて「人財」と表現することにより、高い付加価値を有することを強調している。 |